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杉 俊郎さんを想う
（文・写真：枝恵太郎）

　今回のニュースメールで紹介した「杉俊郎 -病を推して戦中戦後の昆虫出版を担った男-」について、私は著者で甥にあたる鶴田徹さんと直接お話する機会をいただきました。多くの方はもう陸水社を立ち上げていた杉俊郎さんのことは知らないことでしょう。私は現在日本蛾類学会誌「蛾類通信」の編集を担当していますが、蛾類通信の前身である蛾類同志会通信を1954年に立ち上げたのが杉俊郎さん（1960年32歳の若さで早逝）、それを引継いだのが俊郎さんの兄であるヤガの大家であった杉繁郎さんです。この時同志会通信から「蛾類通信」という誌名になり、現在に至っています。同志会通信を含めると70年の歴史の中で、私が現在編集を担当しているというお話を鶴田さんにお伝えしたところ、たいそうなお褒めのお言葉を頂戴しました。俊郎さんのことについては、鶴田さんから色々伺いましたが、詳細はこの伝記を読んでいただきたいと思います。俊郎さんは、9歳の時に発病した脊椎カリエスという病魔と闘いながら、戦中戦後に色々な昆虫関係雑誌が休刊になる中、孤軍奮闘昆虫誌の編集発行をされました。私は俊郎さんについては、磐瀬太郎さんが陸水社の生態昆虫8(2)に書かれた「闘志の人・杉俊郎君を憶う」を読んで知りました。杉繁郎さん（故人）にはヤガ科については色々教えていただきましたが、ついに俊郎さんのお話を聞くことはできませんでした(このことは蛾類通信277号の杉繁郎追悼号に書きました)。今回甥の鶴田さんとお話する中で、鶴田さんの笑顔は繁郎さんの優しい笑顔とそっくりだと気付き、お会いすることができなかった俊郎さんの面影もあるのだろうなと考えながら、私と初代編集長の俊郎さんとの64年（奇しくも「64」むし）の空白が、僅かながらですが繋がったように思えました。



左：蛾類同志会通信第1号　右：蛾類通信277号「杉繁郎追悼号」

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