クモの研究者で有名な岸田久吉氏(1888-1963)ですが、クモ以外に昆虫類や哺乳類などについても自身で編集を手掛けた雑誌Lansania(1929-1941)で記載しています。最近このLansaniaに記載されたというチョウの原記載を調べる機会があったのですが、調べてみると記載されたという号は発刊されていないことが判明しました。調べた原著論文以外にも同様なケースが見られるようで、先人の方が非常に苦労されていることがわかりました。詳細は省きますが、Lansaniaの発行状況について(既刊・未完・別刷・校正刷のみなど)、岸田氏の経歴を含めた重要な論文が出ていることがわかりましたので、自分のメモの中から同好の方が同じように混乱して時間をとられないために、ここに記しておくことにしました。特に世界の博物館に収蔵されているLansaniaについて調べたTennent
et al.(2008)でも確認されていない資料については、斉藤(2019)で補完されています。また、斉藤(2019)による表紙の小野蘭山の肖像画について発行号による画像の変遷や、なぜ「Ranzania」ではなく「Lansania」というタイトルなのかなどの話は興味深い内容でした。
1) Ono, H., 2005. Revision of Spider Taxa Described by Kyukichi Kishida.
J. Arachnol. 33: 501-508.
2) Tennent, W.J., Yasuda, M. & K. Morimoto, 2008. Lansania Journal of arachnology and zoology-a rare and obscure Japanese natural history journal. Arch. Nat. Hist. 35 (2): 252-282.
3) 下稲葉さやか・安田雅俊,2018.日本哺乳動物学会と2人の哺乳類学者,黒田長禮と岸田久吉.哺乳類科学58(1):161-174.
4) 斉藤洋一,2019.斎藤さんの古書渉猟『LANSANIA』.あけぼの通信109: 8-10.