訳あってアオスジアゲハ類の原記載を調べていますが、「スタッフ虫日記」ネタにしてしまいます。Graphium milon (タイプ産地:セレベス,写真左)、teredon (タイプ産地:インド・スリランカ)、anthedon (タイプ産地:アンボン)は、アオスジアゲハG.
sarpedonの亜種だったり、独立種として扱われたりするのですが、いずれもC. & R. Felder (1864)でPapilio属で記載されました。Anthedon(写真右:No.217)は、ネームの後の付記番号124をたどると、なにやらラテン語の記載文が書いてあるので、本書を原記載として良いでしょう。ところが、何故かMilonは解説がありません(写真右:No.216で、セレベスと書かれているだけ)。これは「nomen
nudum」(記載を伴わない不適格名)とされ(Moonen,1998でも指摘されている)、翌年出版された同著者の出版物(C. & R.
Felder,1865)が原記載とされています。さて、問題のTeredon(写真右:No.215)ですが、産地名は「インド(Canara:インド南西部海岸沿い)・セイロン(スリランカ)」、その下の行でGray
のp.28(これはGray,[1853]の資料です)のsarpedonを本書で「teredon」としたと読むことができます。ただし、付記番号による詳細な記載文はありません。この扱いが、カタログ作成者を悩ませています(私もそうです)。ロンドン自然史博物館のサイト「The
Global Lepidoptera Names Index(通称レピインデックス)」では、本書「C. & R. Felder,1864」を原記載としています。しかし、新刊の「インド亜大陸の蝶チェックリスト」(本ニュースメールで紹介しています)では、「G.
teredon (C. & R. Felder,1865)」としています。その他の関連資料も渉猟しましたが、「1865」を採用しているカタログが多いようです。国際動物命名規約第4版(日本語版)「12.1」では「…その学名が示すタクソンの記載または定義,もしくは指示が添えられていなければならない」とされています。あー、やっぱりteredonの原記載は「C.
& R. Felder,1865」としておこうっと!(最近、毎日こんなことをしています)
写真左:Graphium milon (Sulawesi産)
写真右:C. & R. Felder,1864.Verh. zool.-bot. Ges. Wien 14 (3): 305.