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「世界のアゲハチョウ図説」の校正に関する小話
（文・写真：松村賢）

チェコからおよそ9,000kmの旅を終え、世界のアゲハチョウ図説が六本脚に無事到着して皆様にお届けし始めてから半月ほどが経ちました。実物を手に取り、校正箇所の確認をしつつ、図鑑の重みや紙の質感、匂いを感じ、後世に影響を与え続けるこの図鑑の誕生に改めて大きな喜びを浸りながら、万感の思いを込めて世界中の皆様へお届けしております。

ここで、図鑑の校正での小話を一つ紹介します。私は主に図版の画像の校正を担当しました。翅の細部まで確認するために、実寸の400%以上に拡大してモニターチェックを行っていたところ、思いもよらぬゴースト現象を発見することになりました。標本画像上に文字やイラストの輪郭線が重なって見えたのです。印刷用語でのゴーストとは、一般的に印刷した後に起こる現象で、ないはずの絵柄や濃淡が印刷物に現れることを指しますが、PDFデータ上で確認したのは初めてのことでした。要因として考えられるのは、複数のPCでOS（WindowsやmacOSなど）がそれぞれ異なること、画像編集ソフトウェアのバージョン違いなど、作業環境が異なる中で同じデータを上書き保存する、もしくは複合要因で起こったのではないかと考えられます。これは、PDFデータでのみ確認された事象で、入稿・印刷時のチェックで問題なく、実際の印刷された図鑑にはゴーストは出ませんでしたが、仮にPDF入稿していたとしたら、さらに予期せぬエラーが起こっていたかもしれません。一部の画像にのみ、しかも細かな輪郭線なので、かなり拡大しないと確認できない現象でしたが、どのようにして起こるかは謎のままです。注意すべきは、複数の作業環境で同一データを上書き保存したりせず、可能な限り特定のPCのソフトのバージョンを一定にしてデータ保存をすることです。PDF入稿には落とし穴がある、ということを頭の片隅ではなく中心に置いておく必要があると感じました。

　

画像：PDFデータのゴースト P.22 ブッダオビクジャクアゲハの画像部分,　P.24 ナガサキアゲハの画像部分

http://kawamo.co.jp/roppon-ashi/sub946.html

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