島根県 隠岐ノ島
 
〜山陰糞虫放浪紀〜

 (2000年9月15〜17日)

   
久々の採集記である。どこにも行っ
 ていなかったわけではないが、日帰り
 のため書くボリュームがなかったり、良
い虫が採れなかったりと、ネタ不足であ
ったのも事実である。今回は連休明けの
18日の朝から兵庫県で仕事になった。別
の場所に行こうと思っていたが、17日には移動しなければならなかったので、それならば
採集地を西に設定して、少し遠いが一度行ってみたかった隠岐に行ってみることにした。
朝鮮半島付近をウロウロしている台風が少し心配であった。

9月14日(木)急行だいせん
 仕事終了後、新幹線で新大阪へ。大阪を23時15分の夜行急行だいせんに乗る。隠
岐へ行く船が出る港へ行くには、米子か松江に出る必要があり、東京からは高速バス
が安くて便利だが、この路線はすぐに売りきれてしまい、特に3連休なので切符は買え
なかった。一方、遅くとも七類港9時20分発の隠岐汽船に乗らないと、初日が移動だけ
で終ってしまうため、この急行だいせんが現地に早く着く唯一
の方法であった。米子行き飛行機の朝1便でも、ぎりぎり間に
合わないのである。
 夜行列車なんて久しく乗っていないので、寝れるか心配であっ
たが、幸いそれほど混んでなく、ボックスシートを1つ占領できた
ので、寝心地は極めて悪いものの、大阪駅で飲んだビールが
仕事疲れした体に徐々に浸透して行き、リズミカルな線路の継
目の鼓動が、眠りの世界へといざなってくれたのであった。
 2時過ぎまでは何度となくひざやひじが痛くて目がさめたが、3
時頃から米子に着く直前までの記憶がないので、熟睡ではない
ものの寝れたようであった。米子からは、境港線に45分乗って終
点の境港へ。境港はゲゲゲの鬼太郎などで有名な水木しげるの
生まれ故郷ということで、駅前のそこいら中にゲゲゲの鬼太郎の
キャラクター像があって異様であった。そこから更に30分くらいバ
スに乗り、ようやく隠岐への玄関口である七類港へ着く。この辺のアプローチをもう少し考え
ないと、隠岐の観光客数は伸びないのではないか、と余計な心配をしたが、まあ虫を採る側
としては、このままでいいと思った。

2000年9月15日(金) 知夫里島のアカハゲ山へ
 隠岐は大きく道前と道後に分かれ、放牧は古くから行われていて牛馬の頭数も 多い
ようである。今回は日程の都合から、9時20分に七類港を出るフェリーしら しまが最初
に寄港する島である道前の知夫里島に、まず入ることにした。フェリ ーはさすがに連休
初日だけあって多くの人を呑み込
み予定通り出港。たくさんの 釣り客
や郷帰りと思われる家族などでご
った返している客室を出て、甲板
で荷物 を枕に熟睡した。途中台風
の余波でかなり揺れたらしいが、ま
ったく気がつか ないほどよく寝れ
たのは幸いであった。
 知夫里島は何もない島で、宿の
迎えの車に乗りレンタカーを借りると、
すで にお昼を回っていた。レンタカー
はホテル知夫の里という宿で貸し出
しており、 軽自動車が3台あるだけ
なので予約が必要である。昼食を食
べようと思ったが 商店もないため、
少し町の方へ戻ってパンを買い、ほおばりながらアカハゲ山 (写真)を目指した。アカハゲ山周辺
はキャンプもできる放牧地で、場所によっては 海岸まで放牧エリアなので、とても広いエリアに糞
が散らばっている。いざ 意気込んで採集を始めるや否や、おりからの強風に小雨が混じり、一気
に暴 風雨のようになってきた。とりあえず、尾根の鞍部
や水飲み場周辺の平坦な 場所から手をつける。糞には
カドマルエンマ、ヒメコエンマ、フチケ、オビ、 エゾなどの
マグソが多い。しばらくすると、フチケよりも更に一回り
大きく、 しかも丸っこい体型をした褐色のマグソが1頭
出てきた。はたしてこれが目的の キバネマグソ(写真)
であり、ヨツボシでないことをよく確認すると、じわじわと
喜び がこみ上げてきた。何度ヨツボシの小型のスレた
個体にだまされたことか。自分はこれを遥々採りにきた
のだと思うと、こんな地味な マグソを採って感激する人
は日本に10人といないだろうなと感慨深い思いに 浸る
瞬間であった。


2000年9月16日(土) 欠航恐れ島を出る
 天気は回復傾向にあるものの風は依然強く波高い。今日は、西ノ島に移動 する予定で
あったが、移動したところで17日に風がおさまる保証はない。とりあ えず第一目標のキバネ
は採れたし、ダイコクコガネの調査は知夫里で行いたい ので、このまま午前中を知夫里で
の採集に費やして、午後2時の高速艇で本土 に戻ることにした。朝の数時間でキバネを少
々追加。写真のようなマグソがたかってこなれた糞で、多くの
普通種マグソに混じってポツンと発見される。途中で 隠岐汽
船に電話を入れる。こんな離島でも携帯圏内なのが嬉しい。
波はかなり 高く、高速艇はまだ出港するかどうか不明とのこ
と。まあ、欠航したらしたで もう1泊するだけのことである。で
も、17日に欠航したら洒落にならない。
 しばらくして再度電話をするが、欠航が否かは直前まで不
明とのことで、仕方 なく荷物をまとめて港へ向う。帰り際にオ
キマイマイを狙ってかけたPTを回収 するが、1晩だけでしか
も暴風雨だったのでマイマイは落ちなかった。船は入港 して
も知夫里島で止まってしまうこともあるらしく気をもむが、結局本土へ帰る お客さんも多く、無理に
出港したようであった。しかし本土からの便はすでに欠航 しており、波も4メートルと高く、無事に
帰れたことは幸いであった。
 
帰りの高速艇は、加賀港という別の場所についた。すぐにバスが連絡しており、 それに飛
び乗ると40分ほどでJR松江駅に着いた。17日をどう使うかは非常に迷っ たが、三瓶山でツ
ヤケシマグソを狙うことにして、速攻でレンタカー屋に飛び込 み車を借りた。約1時間半で三
瓶に到着し、夕方6時頃には最初の1頭のダイコクを 確認することができた。

2000年9月17日(日) おまけの採集 三瓶編
 
3日間フルに隠岐で調査をするつもりであったが、なぜか流れて三瓶にいた。 昨夜は三
瓶温泉に投宿し、ゆっくり糞を洗い流すことができた。夕食時食堂で大 きな拍手がおこっ
た。柔ちゃんの金メダルのニュースが流れていたのだ。でも、 私は心の中で思った。ボク
は金メダルよりもいいものを採ったんだぞって。も ちろんキバネのことである。そうだ、よう
は価値観の違いじゃないか。
でも、私と同じ価値観の人な
んて、やっぱり日本に10人も
いないかな。 朝は7時に出
発し、3時間ほど採集した。天
気は写真のように素晴らしい
だが、風がすごい。こりゃ、
隠岐汽船は欠航かな?なんて、
余裕の一言。ダイ コクはなぜ
かソーセージ料理を作成中で、
今年は遅れている感じがあっ
たので、 それ以上巣は掘らな
いようにして、ツヤケシは断念。
ダイコクも♀と小型♂を 適当に
リリース。末永い産地の無事を
祈って、三瓶山を後にした。松
江に戻った のが1時半。そこから山陰本線を乗り継いで、鳥取、福知山と移動し、明日の 仕事の
ためのホテルがある柏原に着いたのは、とうに8時を回った頃であった。

 
今回、時間的に十分でなかった隠岐の調査であったが、何とか目的のものも 採れ、今後の布
石としてはまずまずでなかったかと思う。またイニシャル・ トークになるが、色々とアドバイスをいた
だいた茨城のK氏、鳥取のH氏には この場をお借りしてお礼申し上げます。また一緒に行く予定
だった大学の後輩 のG氏、残念でしたね。また、次のチャンスに期待しましょう!