トラップ採集(糞編)

 トラップは、すべての昆虫採集において用いられる最も効率良く虫を集める手法です
が、一方では虫の生態の裏をかくわけですから、狙う虫の生態を熟知していないと、労
多くして実りなし、なんてことになりかねません。ここでは糞トラップの方法や注意点を
簡単に書いてみました。トラップは、各人工夫を凝らすものなので、人によって方法が
異なることが多いですから、これがベストということでも見本というわけでもありません。
ベテランの方には参考にならないと思いますが、これからやってみようという初心者の
方には、多少参考になる部分もあると思います。



1.糞を入手する
 まず、狙う虫の好む糞を入手します。牛、馬、ヤギ、羊は牧場へ行き、トラやゾウ
などのものは動物園に行き、その他イヌは公園で集めたり、自宅または近所の飼
い犬の糞を取っておくなどの手を使います。究極は自分の糞を使う方法があります。
糞をもらう先の許可とお礼はくれぐれも忘れないでね!
 それから、牧場や公園の糞はすでにその場所の糞虫が入っていますので、それ
が掛ける場所で影響を及ぼさないかよく考えて下さい。その地域にいない虫が入っ
ている場合や、種類をリストアップする調査の場合は当然使えません。

2.保存と管理
 保存には普通密閉容器が使われますが、釣具店で売ってる釣り餌を入れるコマ
セバケツが優れています。シール性はほぼ完璧だし、安いし、サイズが選べるので
グッドです。ようはフタ付きバケツですね。それから重要な注意点ですが、糞は常に
ガスを発生しながら腐敗劣化が進行してますから、長く密閉容器に入れておくと、仮
に見た目は同じでも虫が寄ってこないことがあります。つまり糞はなまものですので
長持ちはしないということです。掛ける当日かせめて前日に仕入れるのがベターでし
ょう。嘘のような本当の話で、糞入り容器が爆発した話しがあります。そこで最良の
方法は糞の冷凍ですが、専用の冷凍庫が必要だし(気にしない人は別ですが)、冷
凍したものを現地に持っていく過程もタイミングが難しいので(保冷材と一緒にクーラ
ーボックスに入れるらしい)、あまりやっている方はいないと思います。冷凍保存をや
ってる方は、逆にノウハウを紹介して下さい!

3.仕掛ける
 掛ける場所は、その虫の好む環境と好む下地を選びます。近くに天然のものが
ない場所、風通しの良い場所、人目につかない場所?、見まわり易く忘れない場
所を選び、最初は一定間隔や距離をあけて徐々に成果のあった場所に集中させ
たりするのは、クワガタの果物トラップと一緒ですね!私はいつも掛ける場所を整
地し掃除してから、時に数センチ耕してから置きます。これらが見回りの際の効率
をアップしたり、虫が逃げにくくしたりします。直置きが基本ですが、コップや容器
を埋めてその中に入れる方法や、糞を宙吊りにしてエチレングリコールで受ける方
法(保賀式トラップ)などがあります。また、私はよくやるのですが、雨や日光による
劣化防止のため屋根を付けるのは、ちょっと面倒ですがかなり効果的です。これら
は波板と五寸釘で作ったり、今は写真のようなものを利用してます。これらは百円
ショップやホームセンターで見つかります。もう一つ大事なことは、可能ならトラップ
の許可を取りましょう。私有地はもちろんのこと、観光地、国立公園、高山帯では
美観を損ねることにもなりますし、知らないうちに片付けられることがあります。私
は写真のようなプレートに「昆虫調査中…一定期間後片付けます…移動厳禁」等
記入し、場合によっては名前と携帯電話の番号も入れておきます。これは”トラップ
泥棒”にも効果があるようです。




4.見回る
 一番楽しい瞬間です。ワクワクしますよね。でも、ちょっと待って!その虫は夜
行性では?例えばダイコクコガネの仲間(Copris)は夜行性ですので、一晩置いた
翌朝が良いようです。また多くの種類は気温が上がらないと寄ってきませんし、大
体において1日では集まりませんから、やはり晴れた日を数日経過させる必要が
あります。居心地が良ければ、糞が古くなるまで残っているはずです。また引っくり
返すだけでは不十分な場合がありますから、下の土を掘ったり、近くを探したり、
小型種の場合は、下の土壌ごとベルレーゼに掛けたりします。そこまで徹底して
はじめてマルマグソのような珍品は採れるというものです。

5.後片付け
 さて、無事に成果があったら、片付けも忘れずに致しましょう。許可を取った場
合はもちろんのこと、そうでない場合も糞はやがて分解されるからといって、その
ままにするのは良くありません。持ち帰れとまでは言いませんが、埋めるなりホカ
るなりしましょう。我々は麻痺してますが、一般人にはとても不快なもののようです。

以上、マナーを守って楽しいトラップライフを!