糞採集(野性獣編)

 牧場以外で鹿やタヌキなどの野性獣の糞を探すことは、意外と難しいものです。
それは、人間と同じでトイレや寝床などの生活の場は、あまり目立たない安全な場
所を選ぶからではないかと思います。なので、糞の良いポイントを探すには、その動
物がいつ活動し、いつ繁殖し、どんな環境を好み、餌は何かなどを知る必要があり
ます。私は動物に詳しいわけでもないですし、けしてこれらのことを把握しているわ
けではありませんが、少なくとも下記の要点を押さえれば、いわゆる”ぬた場”や”溜
め糞”の場所探しは効率アップするはずです。



1.環境を観る
 当たり前ですが、その動物が必ずいる所に行かなければなりません。なぜ
なら、動物の分布調査をするわけではありませんので、この辺が”動物屋”と
は大きく異なります。原生林にしかいない動物もあれば、植林でも生活できる
ものもいます。また里山に降りてくるものもいれば、山奥にしかいないものも
ありますが、基本的にはある程度の規模のある古くて懐の深い原生林が良
いでしょう。ちなみに関東での野性獣糞の楽園は丹沢と日光で、両所ともホン
ドジカの密度が極めて高い場所です。また日光は猿でも有名ですね。

2.獣道を探す
 まず林道や登山道を歩き、交叉する獣道を見つけます。獣道の延長には水
場や寝床やトイレがある可能性もありますので、これを糸口にポイントをたぐり
よせます。また、獣道はけして明瞭なものばかりではないのでよく見失いますが、
そんな時は動物の気持ちになって歩きましょう。やはり歩きやすく(すなわち平
坦で)安全なルートを歩くのは、人間と一緒です。

3.寝床を探す
 動物がどんな所で寝るのかよく知りませんが、もし自分が森で暮らすなら、谷
筋よりも尾根筋を、斜面よりも平坦部を、開けた場所よりも大木の下などを選ぶ
と思います。で、その感覚で山を歩いていると、よく尾根の鞍部などに鹿などの
寝床が見つかります。寝床は草が倒れていたり、土が露出していたりするので
分かり易く、また地面や周りの木に毛が落ちていたり挟まっていたりしたら、確
実でしょう。そのような場所には必ず糞もあります。

4.水場や餌場を探す
 水場は動物にとっての命綱です。沢や池などの特定の場所には、動物が水を
飲みにきます。この時も必ず足跡などの痕跡を残すと同時に、糞も落ちているも
のです。また、鹿などの草食動物にとっての餌場は草地ですし、猿などの雑食性
の強い動物は木の実のある場所や時として人家の回りに多いものです。動物が
食事をしたり水を飲んだりする場所は、すなわち糞虫のお狩場でもあるのです。

5.道路標識を探す
 動物の飛び出しに注意、という看板は結構あるものです。これはやみくもに出
ているわけではなく、もっとも多いエリアの獣道に立てられていることが多いの
で、私には「ここに糞がありますよ」という標識に見えるくらいです。ただし熊注意
の看板には注意して下さいね。

6.防護ネットを探す
 よくある獣害は、鹿が新芽を食べてしまうとか、猿が畑を掘ってしまうなどのケ
ースで、これらの動物の多いエリアでは、必ず畑にネットや防護柵がはってあり
ます。罠や爆竹での撃退もあります。動物が見つけられなくとも、これらがいか
に厳重に施されているかで、動物の密度が分かります。ただし、これらのエリア
では地元民も動物の食害にうんざりしているものですから、迷惑をかけないよう
に採集をしましょう。

7.地名から探す
 日本の地名は、その土地の風土を反映させたものが多く、鹿の多い場所は”鹿見”
などと意外に安易なネーミングが多いので、今は環境が一変しているところも
多いでしょうが、それなりに参考にはなるものです。特に山奥の字や大字の地名
なら、その由来が動物から来ていれば、間違いなく生息しているものです。

8.刑事なみの聞き込み調査
 とは言っても、やはり地元の方の情報は強いです。虫のことは知るはずもありま
せんが、動物のことは生活に密着した生き物ですから、よくご存知です。ここでは
1H5Wに乗っ取って聞き込みをしましょう。宿に泊っていたりすれば、サービス精神
からか、村の一番詳しい人に電話してくれる、なんていうこともしばしばあります。
営林署や役場などで聞くのも効果的です。子供たちの方が詳しいこともよくありま
す。ただ、情報の鵜呑みは禁物です。皆さん一番沢山見た時の話しや30年位前
の話しをされますから…。

9.マスメディアから
 テレビ、新聞、雑誌、インターネット、ガイドブック、地図…これら全てに糞虫探し
の情報が詰まってます。テレビのニュースで猿が温泉に入っているのを見た記憶
はありませんか?カモシカが繁殖して困っているニュースは??山のガイドブック
には自然の解説がつきもので、必ず動物のことが書いてあります。山岳地図を見
れば、花の名前とともに動物の名前も…。もちろん最終兵器のネット検索をすれば、
数え切れない情報が手に入ります。そして、動物のいるところ、そこがあなたの行
きたい場所なのです!

さあ、野性獣を探して野山に出掛けましょう。動物は夜行性が多いのでなかなか

見ることができませんが、糞虫は昼間でも糞さえあればOKです。