生物にとって自己組織化とは何か -群れ形成のメカニズム-
Camazine, S.ほか(松本忠夫・三中信宏 共訳), 2009.
A5, 532pp. 6,800円




擬態の進化 -ダーウィンも誤解した150年の謎を解く-
大崎直太, 2009.

A5, 286pp. 3,000円




都会にすむセミたち-温暖化の影響?-
沼田英治・初宿成彦, 2007.
B6, 162pp. 1,600円

「カバー見返し」より
2007年の夏、靱公園(大阪市西区)では38,632匹のセミが羽化すると予測します。
都会は人間によって徹底的に手を加えられた環境ですが、毎年夏になるとたくさんセミの声が聞かれます。
どうしてこのようにたくさんのセミがすんでいるのでしょうか。大阪など西日本の都会では近年クマゼミが増加したといわれていますが、それは本当でしょうか。そのことと、地球規模の温暖化や都市のヒートアイランド現象との間には関係があるのでしょうか。
私たちはこのような疑問に答えるために、市民の方々とともに、マーキング調査・抜け殻調査・網室での飼育など、さまざまな方法で調査・研究を行っています。この本では、その研究の過程を紹介し、今年のセミの発生数や将来の東京の様子を予言しました。都会にすむセミの生活を知るとともに、科学的真理を探究するプロセスを楽しんでください。




目次:
1.セミはどういう生きものか
セミは何と同じ仲間か/世界のセミ、日本のセミ/大阪でヒメハルゼミが見つかった/セミはどのような一生を送るのか/セミの鳴き声はティンバル/セミは何を食べているのか/セミの被害
2.都会のセミの現在
都会とセミ/東アジア各都市のセミの種類 東京・ソウル・札幌・仙台・大阪・その他の都市/世界で最もセミのうるさい街/大阪のセミはどれほどうるさいか/クマゼミの鳴き方のパターン/クマゼミの鳴き始める時刻/クマゼミのカレンダー
3.都会におけるクマゼミの増加
クマゼミ「急増」/頼りは記憶だけ/いつごろクマゼミが増えたのか/市民の考えるクマゼミの増えた理由/大阪市内のミンミンゼミ/都会のセミ多様性の低下
4.偶数年ごとに増減するセミ
抜け殻調査の始まり/大発生のメカニズムを求めて/土を掘って確かめる/調査方法への疑問/毎年かならず増減を繰り返す/2の倍数ゼミ
5.クマゼミの幼虫期間
昆虫の一生の長さ/セミの生活史解明に挑んだ人々/ケージでの飼育開始/根もとを掘り起こす/セミがいなくなった?/クマゼミの一生は八年
6.クマゼミはどこまで飛ぶか、どのくらい生きるか
昆虫の北上を測る/クマゼミの移動能力/大阪城公園でのマーキング調査/長居公園で再度マーキング調査/セミ成虫の寿命
7.湿度によって導かれるクマゼミの孵化
クマゼミは雨の日に孵化する/孵化を導くのは高い湿度/一齢幼虫の乾燥および高温耐性/一齢幼虫の野外での生存/ベットヘッジング戦略
8.なぜクマゼミは増加したのか-温暖化との関係を考える-
地球温暖化の進行/都会は熱の島/クマゼミのカレンダーへの影響/昆虫の分布への影響/クマゼミ北上する/クマゼミが増えた理由/これからやるべきこと/2030年、東京はクマゼミの街になる

参考書
索引


トンボ博物学-行動と生態の多様性-  
Philip S. Corbet, 椿宜高・生方秀紀・上田哲行・東和敬(監訳), 2007.
B5, 798pp. 26,000円
トンボ学の名著、Philip S. Corbet著「DRAGONFLIES: Behavior and Ecology of Odonata」(初版発行:1999年)の待望の日本語版。
原著者の指示により昨年末まで改定作業が行われていたという最新版。上製本、カラー口絵17ページ




本書の特徴:
・トンボ学の百科全書
世界のトンボの形態・生理・行動・生態のすべてを網羅/日本の研究者の成果も多数引用/・ 役立つ付表,95枚付き/
4,000点を超える引用文献リスト/充実した索引/フィールド研究を始めるときのガイドブックとして最適/
動物学研究者・学生,生物教育関係者,環境保全,自然修復,ビオトープ管理,自然教育,害虫の生物防除,文化史研究などに携わる人々に必読・必備の書。

・産卵場所選択と卵の季節適応がわかる
トンボの多様な産卵場所選択,その至近要因と究極要因/卵の外部形態と休眠,寒さと乾燥への季節適応

・幼虫の行動と生態がわかる
様々な水域や微生息場所に適応した幼虫の形態と生理/幼虫の特異な採餌行動とその多様性/幼虫と共生する生物,寄生する生物,その複雑で巧妙な関係/魚類,両生類とトンボ幼虫に見られる,双方向の食う食われる関係/知られることの少ない幼虫の静かな闘争行動/幼虫の発育と変態そして羽化,生活環の柔軟な季節適応

・成虫の行動と生態がわかる
前生殖期の体色と行動の変化/フライヤーとパーチャーの体温調節と活動パターン/巧みな空中捕食者,その採餌ニッチの多様性/長距離移動のメカニズムと適応/求愛と配偶者選択の行動生態学/トンボに特有な連結・交尾のメカニズム,そして精子競争と産卵警護/ トンボ学が導いた新しい配偶システム論.

・トンボと人間の関わりがわかる
洋の東西,文化の違いとトンボの見方/トンボの生息地保全の理論と実践.

目次
1 序章(この本を読むために必要な予備知識,幼虫や成虫の形態名称,生態学の用語などについて解説)
2 生息場所選択と産卵(トンボの成虫が産卵場所を選択する際の,手がかりや行動の多様性について,至近要因と究極要因の両面から解説)
  2.1 生息場所選択
  2.2 産 卵
  2.3 生涯卵生産
  2.4 摘 要
3 卵および前幼虫(卵の季節適応とその多様性に関する章。卵の外部形態や休眠性を主に冬季や乾季を乗り越えるための適応現象として説明)
  3.1 卵
  3.2 孵 化
  3.3 前幼虫
  3.4 摘 要
4 幼虫:呼吸と採餌(呼吸には体表面,葉状尾部付属器,直腸が使われる。その相対的な依存度を幼虫の微生息環境と関連づけて説明。幼虫の下唇を使う採餌行動とその触覚依存性や視覚依存性なども解説)
  4.1 はじめに
  4.2 呼 吸
  4.3 採 餌
  4.4 摘 要
5 幼虫:生物的環境(幼虫と他の生物との関係。植物との共生生物,胞子虫の宿主,吸虫などの中間宿主としてのトンボを解説。また,発育段階によって攻守が入れ替わる魚類,両生類などとの食う食われる関係の研究例を紹介)
  5.1 はじめに
  5.2 他種生物との相互作用
  5.3 捕食の間接効果
  5.4 個体群動態
 5.5 摘 要
6 幼虫:物理的環境(元来熱帯を起源とするトンボが,寒冷地や高山に適応してきた要因を議論。溶存酸素,塩分濃度,乾燥,水質汚染物質などに対する耐性や適応についても説明)
  6.1 はじめに
  6.2 温 度
  6.3 自由水の存在
  6.4 イオン成分
  6.5 溶存酸素,水の動き,および水深
  6.6 汚 染
  6.7 摘 要
7 成長,変態,および羽化(幼虫の発育に伴う形態や生理的な変化と,その日長や温度の影響について解説。季節的な生活環の多様性の創成要因についても議論)
  7.1 はじめに
  7.2 幼虫の発育
  7.3 変 態
  7.4 羽 化
  7.5 摘 要
8 成虫:一般(成虫の前生殖期と生殖期について,その変化を形態,色彩,行動,生理によって観察した例を紹介し,前生殖期のもつ意味とその多様性を議論。そのほか,体温調節,日周活動,捕食,競争についても解説)
  8.1 はじめに
  8.2 前生殖期
  8.3 生殖期
  8.4 物理的環境
  8.5 他の生物との相互作用
  8.6 摘 要
9 成虫:採餌(成虫の採餌行動を探索,捕獲,処理,摂食などの成分に分割することで,トンボの採餌ニッチの多様性を整理。また,生活史を通してのエネルギー収支について議論)
  9.1 空中捕食者としてのトンボ
  9.2 空中採餌
  9.3 表面採餌
  9.4 餌動物の処理
  9.5 採餌効率の増加
  9.6 エネルギー転換
  9.7 トンボ以外の餌動物への採餌の影響
  9.8 摘 要
10 飛行による空間移動(トンボの中には日常的な移動範囲を越えた大規模な移住飛行を行う種がいる。大規模飛行と上昇気流や季節風との関係を解説し,大規模飛行の意味を議論)
  10.1 はじめに
  10.2 生息場所内の移動
  10.3 生息場所間の移動
  10.4 概 観
  10.5 摘 要
11 繁殖行動(繁殖がうまくいくには,雄と雌が効率よく出会い,雌雄が互いに同種であることを認識し,雄が雌に精子を渡し,雌は幼虫の生存に都合の良い場所に産卵することが必要である。繁殖行動をこの4つのプロセスの総体として考え,トンボ達がそれぞれのプロセスに応じて進化させてきた行動の多様性を議論。その結果に基づき,配偶システムの新しい分類法を提案)
  11.1 はじめに
  11.2 雌雄の出会い
  11.3 攻撃行動
  11.4 視覚によるコミュニケーション
  11.5 交尾前タンデム
  11.6 雄内移精
  11.7 交 尾
  11.8 交尾後の行動
  11.9 進化と配偶システム
  11.10 摘 要
12 トンボと人間(人間がトンボに対してどのような好悪の感情をもっているか,地域文化との関連において紹介。また,トンボ群集は集水域の指標生物として優れていることを示し,トンボの生息地保護を推奨し,保護活動に対し様々な提言をしている)
  12.1 トンボと人間とのかかわり合い
  12.2 トンボに対する人間の認識
  12.3 トンボ学
  12.4 保 全
  12.5 摘 要
用語解説 
付表 
引用文献 
追補文献 
生物和名の参考文献 
トンボ和名学名対照表 
人名索引 
トンボ名索引 
事項索引


kupu-kupuの楽園‐熱帯の里山とチョウの多様性
大串龍一, 2004.
A5, 236pp. 2,800円
熱帯アジアの国々は急速に都市化が進み自然環境は急激に変化しつつある。JICAの長期派遣専門家としてインドネシアのパダン市に滞在した時の研究資料などをもとに「熱帯のチョウ」の生活と行動をまとめた。環境の変化による分布、行動の移り変わりの実態が明らかになる。






野生生物保全技術 第2版 
※2007年8月中旬に第2版(改訂版)が発行されました
佐藤正孝・新里達也(共編), 2007(2003).
A5, 448pp. 4,600円
生物多様性の保全は環境問題の中でも最重要課題の一つである。本書はこの自然環境と野生生物保全の現状と期待される将来をテーマに、その理念と施策、先端の保全及び情報技術について、第一線で活躍する研究者・技術者がまとめた現場からの最新レポート。



目次
第1部 野生生物保全の現在
 野生生物保全の目ざすもの  新里達也・佐藤正孝 2
 保全活動と技術者  新里達也 10
 国際自然保護連合の動き  佐藤正孝 20
 野生生物保全と倫理問題  新里達也 26
第2部 野生生物保全事業の実態
 国における取り組み  鳥居敏男 42
 レッドデータブックの編纂  植田明浩 60
 河川水辺の国勢調査  金尾健司 76
 森林の有する多面的機能の発揮  藤江達之 89
 地方自治体における取り組み-愛知県における事例-  石田晴子 99
 外来生物が引き起こす自然史的問題  高桑正敏 110
 小笠原における外来生物の脅威  苅部治紀 124
 湿地環境の保全  松井香里 141
 淡水生物保全の実際  佐藤正孝 150
第3部 野生生物保全の調査技術
 コウモリ類保護の観点  前田喜四雄 160
 鳥類保護を支える調査とネットワーク  川那部真 173
 両生類の行動圏  松井正文 185
 地表性甲虫類による生物環境評価技術  石谷正宇 199
 野生植物の保護管理  西条好廸 214
 生物相調査における生物間相互作用の評価  横山潤 228
 指標種による環境評価  中村寛志 242
 環境アセスメントにおける生態系評価  増山哲男 259
 HEPによるハビタット評価  田中章 275
第4部 野生生物保全の情報技術
 野生生物保全におけるGISの利活用  鈴木透・金子正美 292
 環境評価に有効な新しいデータベースの構築  横山潤 314
 生物標本をいかに扱うか  新里達也 332
 地域生物相のインベントリー 佐藤正孝・新里達也 345
参考文献 357
キーワード 377
付録 野生生物保全の関連法(抄) 391
事項索引 415
生物名索引 421


熱帯のハチ‐多女王制のなぞを探る
伊藤嘉昭, 1996.
A5, 197pp. 2,136円
アシナガバチ類の社会行動はどのように進化してきたか?この進化の跡を訪ねて、沖縄、パナマ、オーストラリア、ブラジルなど熱帯・亜熱帯地方での野外調査の記録を豊富な写真と現地でのエピソードをまじえて紹介。昆虫行動学者の暮らしや、実際の調査の仕方がよくわかる。






スズメバチの科学 ※発行元・弊社ともに完売・品切
小野正人, 1997.
A5, 174pp. 2,700円
日本産スズメバチ属全7種の生態を227枚のカラー写真と端的な説明でまとめたカラー図版編と、豊富な学術情報を網羅した解説編の2部構成。ネイチャー誌に発表した「ニホンミツバチの蜂球による発熱防衛の進化」の紹介もある。




但馬・楽音寺のウツギヒメハナバチ‐その生態と保護‐
前田泰生, 2000.
A5, 198pp. 2,800円
兵庫県山東町楽音寺境内に80年も続いているウツギヒメハナバチの大営巣集団がある。その生態とウツギとのかかわりについて詳細に述べ、保護の考え方と方策、さらに生きた生物教材としての活用を提案。また本種の天敵として、ヒメツチハンミョウとマルクビツチハンミョウの生活史を21頁に渡って解説しているのは特筆される。生物群集や自然保護に関心のある方にお勧めの1冊。