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環境動物昆虫学のすゝめ -生物多様性保全の科学-
石井実・平井規央・上田昇平・平田慎一郎・那須義次 編著, 2024.
A5, 448pp., 価格:5,000円(税込5,500円)

「環境動物昆虫学」は、生物多様性が劣化した現代社会の中で、人と昆虫などの動物との共存について調査・研究する新しい
学際的な学問分野です。地域の動物相あるいは動物群集を分類学的に正確に把握し、絶滅危惧種については、動物生態学
や集団遺伝学、保全生物学的な方法により危機要因や保全単位などを明らかにし、適切な保全方法を探ります。本書は、
初学者にとっても役に立つ野外調査や採集、飼育、形態観察などの方法の解説を含む、環境動物昆虫学全般にわたる入門
的な書籍です。各項の内容は、実際に行った研究を題材として、フィールド研究などにおける調査方法、研究の進め方などに
ついて平易な文章で書かれています。またカラーの写真や図を多用しているので、大学や大学院でのゼミ等での利用や、
昆虫好きの中学生・高校生向けの書物としても最適です。



【目次】

はじめに
序章 環境動物昆虫学がめざすもの

第1章 地域の生物群集を調べる
1 コウノトリの巣は希少種アカマダラハナムグリの天国
2 水田生物の多様性
3 トンボの楽園「中池見湿地」の過去と現在
4 チョウ類の視点で里山をみる
5 土の中の多様な動物の世界:里山林の土壌性甲虫類

第2章 生物の生活史戦略を調べる
6 源流部にサンショウウオを求めて
7 オオカマキリとチョウセンカマキリのすみわけ
8 クモに便乗するカマキリモドキの不思議な生活史
9 ウラナミジャノメの不規則な世代数の変異を追って
10 ブチヒゲヤナギドクガ成?の?動と生態を追って

第3章 昆虫類の多様性を調べる
11 森に棲む赤い妖精ベニボタル
12 世界最小の甲虫・ムクゲキノコムシ
13 花カメムシの生物学
14 幼虫がケースをつくる小蛾類
15 分類研究のおもしろさと難しさ?キバガ科の研究をとおして
16 河川のベントス調査の難関,ユスリカ類の同定作業を克服する

第4章 分子情報を利用した解析
17 ペット魚,“メダカ”の他地域個体群の侵入による遺伝子攪乱
18 絶滅危惧種アサマシジミの遺伝的多様性と保全単位
19 ミカドアゲハ日本本土亜種の分類学的特徴と分布拡大
20 分子情報が解き明かす潜葉性小蛾類の多様性
21 湿地に生息する蛾類の生活様式と系統

第5章 人間社会との関係を考える
22 博物画や標本コレクションから探る京都市のチョウ相の変化
23 滋賀県における農林業・里山の生物多様性を脅かすニホンジカ被害と対策
24 大阪府北部におけるギフチョウの衰退とニホンジカの増加
25 チャノキイロアザミウマはなぜウンシュウミカンの大害虫になったのか
26 ビオトープ池の水生動物・昆虫群集?池干しによる撹乱の効果を実証する?
27 長距離移動昆虫オオカバマダラ? 市民サイエンスが支える調査と保護

おわりに

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